森ボラは未知の領域

だからこそスキルアップにつながる

冨田諒さん 大学生

 

和歌山県の自然に触れて過ごした少年時代



ひたすら広がる青い海、険しい山々、点在する漁村。和歌山県の南は自然の宝庫であり、古くからの「地域」が色濃く残る。京都に住む大学生の冨田諒さんは、和歌山県にあるおじいちゃんの家で夏を過ごした。海に潜って、川で遊んで、人と触れ合う。そこにある田舎の暖かさが好きだった。そんな冨田さんが、より「地域」に興味を持つようになったことは、不思議ではない。



成長した冨田さんには、少年時代には見えなかったものが見えてきた。少子化や高齢化など、地方が抱える様々な問題である。折しも、世間では地域活性化が叫ばれるようになってきた。冨田さんも、どうしたら良いのか考え、そして行動を始めた。


 

地域おこしで多くを学んだ学生生活



まずは地域おこし協力隊へ参加し、様々な地域で活動をした。例えば、沖縄、佐渡ヶ島。そこで様々な人たちと出会ったという。



「出会った人たちは、すごく魅力的でした。素晴らしい仲間と活動を進める中、地域の活性化のためには、『地域の伝統』を大切にすることが重要だと気づいたんです。例えば地域のお祭りなどがそうです。また、農業も大切です。今、農業体験に興味をもつ若者が増えていますから。そういった様々な魅力が絡み合い、最終的に『定住』に至る人たちが増えてくると思います。」



そう話す冨田さんは、とてもイ

キイキとしている。


「いきなり移住というとハードルが高い。でも、時々若者が遊びに来るだけでも地域には活気が生まれます。それだけでも地域おこしになります。継続して地域の魅力を発信し、お祭り、森作り、イベントなどで若者を呼び込んでいく。そうした活動の積み重ねが大切なんだと理解しました。」


より深く地域と係るために


 

それらの活動は素晴らしいものだったが、基本的に短期間での活動となっていた。もっと深く地域に関わりたいと考えた冨田さんは、国際ボランティアNGO NICEを通じて活動のステージを探した。そして見つけたのが、栃木県を中心に活動を行う『NPO法人トチギ環境未来基地』である。



未来基地では、参加者は基本的に宿舎で寝泊まりし、交代で自炊する。そして、地域のコミュニティと関わりつつ自然を保護するための様々な活動を行う。竹林の伐採や、震災のときに津波で流された海岸林の再生、森の中で子どもたちが遊ぶための遊具を作りなどである。一回のプログラムは数ヶ月にも及ぶ。



これまでとは異なる活動に、抵抗はなかったのだろうか。冨田さんは言う。



「森作りや間伐などの活動は、は未知の領域でした。だからこそ自身のスキルアップにもつながるし、地域にもより深く関われると思いました。」



では、NPO法人トチギ環境未来基地では、具体的にどんな活動を行っているのだろうか。



「4つの現場に日替わりで行きます。竹の伐採、幼稚園の脇にある森、廃校の森など。そこで遊具や遊歩道をつくったり、整備をします。各フィールドでは毎回リーダーが割り当てられ、その指示で活動を進めます。自分から望んでリーダーをすることもあります。



イベントも行います。大学で活動内容をプレゼンし、参加者を募ったり、交流会の実施します。マルシェに参加し、畑で育てた野菜を売ることもあります。先日は、チャリティCDの販売や、クラフト教室、子供向けの輪投げ大会や、スタンプラリーなどもを行いました。」



自然保護活動以外にも多彩な活動があることがわかる。


楽しい仲間との生活


 

共同生活についてはどうだったのだろうか?



「これまで自炊はほとんどしたことがありませんでした。食事も当番制なので最初は難しかったけど、簡単な野菜炒めなどから始めました。ちなみに料理が上手な方はとても凝った料理を作ります。今は包丁使うのも慣れて、自炊が苦にならなくなってきました。これも成果のひとつです(笑)。掃除は週一回、全員がローテーションで回していきます。」



そう話す冨田さんからは、協働生活を楽しんでいる様子が伺える。



「休みは週1、2日あります。それ以外の日は、ワークかイベント運営、座学などを行っています。例えば、『NPOとは何か?』『マナー講座』『リーダートレーニング』など。自然保護活動に限らず、基本的な社会生活のルールから、リーダーとして活動する上での必要な知識・経験までを学んでいます。」



学ぶだけでなく、遊びも大切である。NPO法人トチギ環境未来基地では遠方からの参加者も多いため、地域を楽しむためのプログラムも用意されているという。



「この前の休日は、みんなで日光に行きました。東照宮、華厳の滝を見て、その後は那須高原で馬に乗ったりしました。栃木のの名所ほとんど行ったと思います。」


これからの活動について



自然保護活動で得た様々な経験。それを糧に、これからどのような道を考えているのだろうか、聞いてみた。

 


「まず京都にもどり、復学します。自分の専門である土木工学の勉強に戻ります。ボランティア活動では色々なことを学びました。漫然と授業をうけるだけでなく、人間と自然がどう関係すべきなのか考えながら、専門に活かして行きたいです。それに、夏休みになったらまたボランティアしたいです。今度は、漁業関係とかの経験をしたい。いろんなことをまず経験し、これと思ったことを極めて、地元に還元するのが目標です。今は、とりあえず幅広くチャレンジしたいです。」


 

そう話す冨田さんの目はとても輝いている。