「爽快感」が森ボラの醍醐味

吉田直樹さん 大学生


『普通の学生生活』からのターニングポイント


 

吉田直樹さんは、エネルギーに満ち溢れた青年だ。



一見するととてもおっとりしていて、積極的に何かにチャレンジするというキャラクターとは正反対にも見える。でも、その柔らかな物腰の中に確固たる信念と行動力を秘めている。



普通の大学生は、忙しい。勉学に遊びにアルバイト。そこにサークル活動も加われば、それで十分活動的だろう。しかし、吉田さんはそれに加えて、ハードな地域貢献活動に多くの時間を割く。


 

そんな吉田さんは、どうして森林保護活動を始めたのだろう。



吉田さんの『ターニングポイント』は、大学1年生の秋だった。大学でJICA(独立行政法人国際協力機構)海外協力隊生の講義を受け、いち学生であっても途上国に貢献できることを知ったのだ。それを『とてもかっこいい』と思ったその時から、地域へ貢献することと自分の将来にについてホンキで考え始めた。



大学1年生の終わり、あるインターンシッププログラムに参加した。それは『実践型・課題解決型インターンシップ』と呼ばれるもので、チームを作って具体的な課題を解決するために知恵を絞って実行するプログラムである。



課題はとても困難で、そう簡単にクリアーできるものではなかった。



「インターンとしてはやり切った感がなかったんです。常に手探り状態で、結果にも不満を感じていた。ただ、数ヶ月間、週4~5回も集まってチームで取り組んで、調べて、シェアして、考え抜いたことが新鮮で、社会人の一部を体験している気がしたんです。」



不完全燃焼だったのだろうか。それをきっかけに、さまざまな地域貢献活動に関わることになっていく。

 

森ボラとの出会い


 

「あるとき、インターンシップをプロデュースしたNPO法人のスタッフから、『かぐや姫さがしにいこう』と言われたんです。それが竹林整備活動でした。」



吉田さんは、それまでは自然保護活動にアンテナを立てていなかった、という。ところが、1日竹切った結果は『とても楽しかった』のだ。そして、森林整備の必要性に気づいた。



他大学のボランティアとも出会った。おしゃべりしながらする活動はとても楽しく、そこでボランティアをあつめて森林整備することを知った。学生でもちゃんとした活動ができるのだ。これなら自分でもできる。



そう思った吉田さんは、森林整備のボランティアに『ハマって』いく。ボランティアとして関わって、汗かいて、成果が見えるという過程に、爽快感を感じ始めたのだと言う。

 

山と共に過ごした少年時代


 

そんな吉田さんのバックグラウンドには、山や自然との大きな関わりがあった。



「実家が岐阜県山県市の田舎にあり、山を所有していました。谷あいの村で小さな畑がありました。そこでは、熊の被害が問題になっていました。山の問題など、山の境界がどうのとか、普通に話題が出ていました。そういう自然と共生する中での課題は、常に身近にあって、どこかでそういういのを気にかけていたんです。」



そして、大学進学では農学部を選び、ボランティアで自然保護活動をするようになった。そして今は、インターン生として、NPO法人トチギ環境未来基地で活動を行っている。

 

ボランティアをコーディネートする立場として



NPO法人とは、単なるボランティア団体では無い。法人として収入もあれば、スタッフに払う給料もある。そんな中でのインターン生としての経験は、これまでとはまた一味違ったものであるという。



「NPO法人でインターンをやってみて、ある種ビジネスであるということを理解しました。全ての活動には予算があり、チラシ1枚作るにしてもお金がかかります。ただたくさん刷って配っただけで、レスポンス無かったら意味はありません。そこに責任感を感じます。」



自然保護活動を通して、社会に触れた吉田さん。ボランティアとして関わっていたときには見えなかったものが見えてきた。



「コーディネートする側として、体験し学びたいと思ったんです。ボランティアのときは、参加者としてただ竹を切っていればよかった。今はインターンとしてコーディネートする立場です。時間をマネージメントしたり、ボランティアの苦手分野についてアドバイスをします。」



そんな吉田さんには、森林整備ボランティア活動の抱える課題も見えてきている。



「森林保護活動では、大学生や若者の参加者は少ないんです。若者、特に20代への活動の周知方法を考えたり、イベントを実施したりしています。ボランティアに呼びこむことが大きなタスクとなっているんです。先日も、大学で集客イベントを実施しました。その中から、実際の活動にボランティアが来てくれるようになりました。これはとても嬉しかったです。声かければ帰ってきてくれる、次につながってくれている。これはとても達成感があります。」



一方で、こうも続ける。



「参加者数はまだまだ足りていません。僕たちが活躍できるステージは、まだまだたくさんあります。森のなかで汗を流す、この爽快感をぜひ多くの若者に知ってもらい、仲間を増やして行きたいです。」



吉田さんの活動は、これからもっと広がっていく。