引っ込み思案だった私を

変えてくれた森ボラ

赤羽稚菜さん 大学生

 

普通の大学生が触れたボランティア活動



普段はおしゃれして学校に通い、サークル活動を楽しみ、カフェで休日を過ごす。それが赤羽稚菜さんの印象だ。時には汗だくになり、土に触れ、虫にも刺される森林整備活動とは、あまり結びつかなかった。



この日のボランティアでは、とある障がい者向け施設の裏山をきれいに整備し、レクリエーション等で使うための作業を行っていた。夏の日の雨上がり、日差しは強く森の中は蒸し暑い。そこで、10名ほどの若者が、草を刈り、木の枝を切り、遊歩道を整備していた。その中に、ちょっと引っ込み思案で人見知りだけど、笑顔でコツコツと活動を行っている赤羽さんがいた。



赤羽さんは大学4年。児童教育専攻で、いずれは先生を目指す女子大学生だ。


 

初めてボランティア活動をしたのは大学1年生のときだったという。部活として、児童養護施設や院内学級などのボランティア活動に参加した。活動に参加することに抵抗はなかった。面白いな、と思ったという。その後、ゼミの先生の繋がりから、森林整備活動を紹介された。同じボランティア活動とはいえ、全く方向性の異なる活動にどうして参加したのだろうか。



「あまりやったことない分野だからこそ興味を持ちました。基本的に好奇心旺盛なんです。大学生なんだし、積極的に色々なことにチャレンジしたいと思いました。だからとても気楽に参加したんです。」



森林整備や自然環境保護のボランティアというと、一見敷居が高く見える。装備も必要だし、知識や経験も必要そうに見える。しかし、参加のきっかけはとても小さくても構わないのだ。


 

「自分が楽しむ」ボランティア



以前の赤羽さんは、ボランティアとは推薦とるために内申点を上げるために行うことだと思っていたという。休みの時間をあえて割いて何が楽しいんだろうと思っていた。その時はボランティアに全く興味がなかった。

 


しかし、実際に活動を始めてみると、その印象は大きく変わった。



「実際始めてみて、それまでイメージしていたボランティアとは異なっていました。人のため、というよりも、自分が楽しむ感じなんです。竹の切り方を教えてもらったり、コミュニケーションの取り方を学んだり。教室で教えてもらっている感じなんです。人のためだけではなく、自分が楽しむものでもあると実感しました。」



赤羽さんは、ひとつひとつの事柄を噛みしめるように話してくれる。



「それに気づいたことがありまして、私は黙々と作業するのが好きなんだなぁと。まるで、昔の図工の時間みたい。作業している間は無になれるんです。自分の時間を作れる。

 


休みの日、家にいるだけだと、テレビを見たりしてなあなあで過ぎてしまう。けど、森林ボランティアをしていると、作業しながら自分を振り返る時間が作れる。これって、とても貴重なことだなと思うんです。」



自然環境保護活動というと、どうしても肉体労働のようなイメージがあるが、実際はどうなのだろうか。


 

「雰囲気は、とても明るく、和気あいあいとしています。確かに森林整備は汗だく、泥だらけになって蚊に刺されることもあります。けど、楽しさのほうが勝ってます。昔はテニスをやっていたので、体を動かすのは楽しいんです。それに、ここには非日常があります。普段の生活で”ナタ”振るうことなんてありませんから。」


 

たくさんの楽しいことが待っている


 


一方で、ボランティアとは仲間との共同作業でもある。自分を「引っ込み思案」と評する赤羽さんにとっては負担ではなかったのだろうか。



「仲間と作業をするのは楽しいです。ボランティアに参加するのはみんな面白い人たちばかり。それに、色々な人と関わるのは教師を目指すうえで重要です。


 

私はとても人見知りなのですが、今ではそれを克服し、成長できた気がします。以前だったら、知らない人が集まる場では全然しゃべれませんでした。笑顔でいようとも思えませんでした。


 

今では、なるべくいつも口角を上げていようと思っています。性格も明るくなったかもしれません。物事をポジティブに考えるようになりました。」



そう話す赤羽さんは、満面の笑顔だ。



大学は人生でも多くの出会いやチャンスに恵まれた時期だ。しかし、時間はあっという間に過ぎるし、何も行動しなければ何も始まらない。ボランティアに参加するということは、人生の何かの「きっかけ」をつかむチャレンジでもある。赤羽さんは、だからこそまだ一歩を踏み出せない人たちに、メッセージを送りたいという。



「ボランティアを楽しむためには、活動内容や目的を事前にしっかり理解しておくことです。そして積極的に他の人とコミュニケーションを取るべきです。

 


もちろん、初めての場所に行き活動に参加するというのは勇気が必要というのも分かります。いろいろ考え悩むこともあるだろうけど、何も心配はいりません。この場には大人もたくさんいるし、楽しい中で活動できるよう気を配ってくれます。


 

何も気負わないで、楽しむ気持ちでいくだけで大丈夫。そこには、新たな発見、学びなどたくさんの楽しいことが待っています。活動のための装備や段取りなど、準備も整っています。力がないと思う人でも、気軽に参加できます。


 

失敗しても大丈夫。経験を積んだ方がしっかりフォローしてくれますから。」


これからの私とボランティア


 

槇原敬之の「ぼくがいちばんほしかったもの」という歌があるという。赤羽さんが昔から好きな歌だ。


 

『自分が欲しかったものを手に入れた。それをもっと欲しい人がいたからあげた。最後は何も残らなかったが、笑顔幸せになったひとがたくさんいて、それこそが自分の本当に欲しかったものだった。』という内容の歌詞だそうだ。


 

「ボランティア活動をできることは、それ自体が幸せなことだと思いました。地球環境に問題が増える中、まずは地元の自然ももっとよく知って行きたいです。そして将来は、子供たちと一緒にそんな自然を守ることできたらいいなと思っています。」


 

あげたはずが、実際にはたくさんのものをもらっている。そんなボランティア活動に、赤羽さんはこれからも関わっていくことになるだろう。